退職勧奨は、会社が従業員に退職を促す行為です。解雇とは違い、最終的には本人が退職するかどうかを判断します。 だからこそ、会社側に「本人が考える余地を残した」「圧力ではなく説明として行った」と分かる記録が必要になります。
退職勧奨で起きやすいトラブル
会社としては、何度も問題を伝えたうえで、今後の勤務継続は難しいと説明したつもりだった。 本人もその場では退職に同意したように見えた。ところが退職後に「本当は辞めたくなかった」「強く迫られて断れなかった」と言われることがあります。
この時、会社側に面談メモ、本人の発言、検討期間、提示した条件の記録がなければ、会社の説明は弱くなります。 事実があったかどうかだけでなく、後から第三者に説明できる形で残っているかが重要です。
退職勧奨と解雇は違う
解雇は、会社が一方的に労働契約を終了させるものです。一方、退職勧奨は、会社が退職を促し、本人が応じるかどうかを判断するものです。 退職勧奨では、本人に選択の余地があったか、検討する時間があったか、強い圧力になっていないかが問題になりやすくなります。
「辞めないなら解雇する」と断定的に伝える、長時間面談を続ける、複数人で囲む、その場で退職届を書かせる。 こうした対応は、後から退職強要だったと主張されるリスクを高めます。
残しておきたい面談記録
退職勧奨を行う場合、少なくとも次のような内容を記録しておくことが大切です。
- 面談日時、場所、出席者
- 会社が伝えた内容と、退職勧奨に至った背景
- 本人の発言、反応、質問、反論
- 即答を求めず、検討期間を与えたこと
- 退職条件を提示した場合の内容
- 面談後に渡した書面、メール、確認資料
退職勧奨の前に確認したい記録
退職勧奨の面談だけを記録しても、十分とはいえません。なぜ退職勧奨に至ったのかを説明するには、その前段階の記録が必要です。 過去の指導履歴、勤怠不良、業務上の問題、雇用契約書、就業規則、評価や面談の履歴が整理されているかを確認します。
特に、問題行動や能力不足を理由に退職を促す場合は、会社がどのような改善機会を与えたかが問われやすくなります。 「突然辞めてほしいと言われた」と見えないように、時系列で経緯を残しておく必要があります。
記録がない会社で起きること
記録がないと、会社側は「十分説明した」「本人も納得していた」と言うしかありません。 しかし本人の主張と食い違った場合、会社の説明を支える材料が不足します。労働局、社労士、弁護士へ相談する場面でも、時系列を再現しにくくなります。
厚生労働省の個別労働紛争解決制度でも、職場のトラブルについて労働者・事業主の双方が相談できる仕組みが用意されています。 相談や紛争になってから記録を作ることはできません。日々の対応時点で残しておくことが重要です。
会社側が避けたい対応
- その場で退職届を書かせる
- 「辞めないなら解雇する」と断定的に伝える
- 長時間、または複数人で圧迫する
- 録音されている前提を忘れる
- 面談メモを残さない
- 退職条件を口頭だけで伝える
厚生労働省「個別労働紛争解決制度」 https://www.mhlw.go.jp/general/seido/chihou/kaiketu/index.html
本記事は一般的な情報提供です。退職勧奨、退職合意、懲戒・解雇の個別判断は、社労士・弁護士などの専門家にご相談ください。